事業者の都合・不可抗力で提供できないときの返金の決め方

悪天候、講師の休み、システム停止、サービス終了。事業者の側の事情で提供できなくなる場面を三つに分け、選択肢、按分、前払い分の精算を先に決めておく手順を整理します。

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不可抗力の例示に講師の体調不良や設備トラブルを混ぜると、事業者に責任がある場面の返金まで封じる定めになり、条項そのものの効力が問われます。

このページの要点

  • 双方に責任がない・事業者に責任がある・利用者に責任がある、の三場面で民法の出発点が違う(536条、415条、541条〜543条)。
  • 返金・振替・代わりの提供は利用者が選べるようにし、回答がないときは利用者に有利な側にみなす(消費者契約法10条)。
  • 一部実施は提供の単位で按分する(民法648条3項)。付随的なサービスは料金の内訳で切り出せるようにしておく。
  • 不可抗力は事業者側の事情を混ぜず、判断の基準を書く。サービス終了は前払い分の未提供部分を精算する。

結論:三つの場面に分け、選択肢・按分・精算を先に書く

悪天候で中止になった、講師が急に休んだ、システムが止まった、サービスそのものを終了することになった。事業者の側の事情で、約束した役務を提供できなくなる場面は、どの業種にもあります。この場面での返金の決め方は、利用者が自分の都合で解約する場面に比べて書かれていないことが多く、書かれていても「当社が判断する」「状況に応じて」という書き方になりがちです。

結論は、次の五つです。

  • 三つの場面に分ける。双方に責任がない場面、事業者に責任がある場面、利用者に責任がある場面では、民法の出発点が違う(536条、415条、541条〜543条)。返金の結論も違う。
  • 選択肢を利用者に示す。全額返金、別日程への振替、事業者が提案する代わりの提供のうち、誰が、いつまでに選ぶのか。回答がないときの扱いも書く。
  • 一部だけ実施できたときは、提供の単位で按分する。付随的なサービスの不実施は、料金の内訳で切り出せるようにしておく。
  • 不可抗力の定義を広げすぎない。事業者側の事情を混ぜず、不可抗力に当たるかどうかを事業者が最終的に決める書き方も避ける。
  • サービス終了では、前払い分の未提供部分を精算する。終了の予告、精算の計算、データの取扱いを、終了の条項とあわせて書く。

利用者の都合のキャンセルはキャンセルポリシーの型と起算点の決め方で、返さない部分の書き分けは「返金しない」条項の書き方で、返金の手続は返金の手続・期限・手数料の決め方で扱います。このページは、事業者の側の事情で提供できなくなる場面に絞ります。

三つの場面と、民法の出発点

まず、提供できなくなった原因が、誰の側にあるのかで場面を分けます。民法は、原因の所在によって結論を変えています。

提供できなくなった原因の所在と、民法の出発点

場面例民法の出発点規約に書くこと
双方に責任がない台風・大雨・地震などの災害、公的な規制、大規模な外部の通信障害債務を履行できなくなったとき、債権者は対価の支払いを拒める(536条1項)。債務の全部が履行不能なら、催告なしに解除できる(542条1項1号)。全額返金、振替などの選択肢。通常は、損害賠償までは問題にならない。
事業者に責任がある講師・担当者の都合による休止、設備やシステムの不具合、手配の不備、自社が原因の障害損害賠償(415条1項)、催告解除(541条)、催告によらない解除(542条)。解除すると原状回復の義務が生じ、金銭には受領時から利息を付す(545条1項・2項)。返金に加えて、利用者に生じた損害をどこまで補うか。責任を全部免れる書き方は避ける。
利用者に責任がある利用者の遅刻、準備の不足、連絡不通、利用者側の機器や通信環境の不具合債権者の責めに帰すべき事由による履行不能では、対価の支払いを拒めない(536条2項)。債権者は541条・542条の解除ができない(543条)。キャンセルの規定との関係。事業者が債務を免れて得た利益は償還する(536条2項後段)。

この表は、規約を考える出発点であって、場面ごとの結論を決めつけるものではありません。同じ出来事でも、事情によって場面が変わります。たとえば、講師の急な病気は、事業者の事情ですが、事業者が回避しようのない事由と見られることがあります。システム障害は、外部のサービスの大規模な停止なら双方に責任がない場面に近く、自社の保守の不備によるなら事業者に責任がある場面になります。

そこで規約では、場面を事業者が一方的に分類するのではなく、基準を書いておくことが大切です。「当社の責めに帰すべき事由」「当社の責めに帰することができない事由」という民法と同じ言葉を使い、その例を並べると、運用の物差しになります。

三番目の場面で注意したいのは、536条2項の後段です。債権者の責めに帰すべき事由で債務を履行できなくなった場合でも、債務者が自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければなりません。利用者の責めで提供できなかったとき、事業者が仕入れや人件費を免れていれば、その分は返す、という考え方です。キャンセル料の算定は、この考え方と結びついています。実際には、利用者に責任がある場面は、多くの場合、キャンセルの規定で処理されます。

返金・振替・代わりの提供:誰が選び、回答がないときはどうするか

提供できなくなったとき、利用者に残る選択肢は、大きく三つあります。受領済みの料金の返金、別の日程への振替、事業者が提案する代わりの提供です。書き方の要は、次の四点です。

  • 誰が選ぶか。事業者が一方的に代わりの提供を決めるのではなく、利用者が選べるようにする。
  • いつまでに選ぶか。回答の期限を書く。期限は、通知を受けた日の翌日から数えるなど、数え方も書く。
  • 回答がないときはどうなるか。返金とみなすのか、振替とみなすのか、それとも、さらに確認するのか。
  • 選んだ後の精算。振替や代わりの提供で差額が生じる場合の精算の方法を書く。

特に「回答がないときの扱い」は、書き方によって意味が大きく変わります。消費者契約法10条は、無効になる条項の例として、消費者の不作為をもって新たな消費者契約の申込みまたはその承諾の意思表示をしたものとみなす条項を挙げ、民法などの任意規定に比べて消費者の権利を制限し義務を加重する条項のうち、民法1条2項の基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効とします。「回答がないときは、振替を承諾したものとみなす」という書き方は、この類型に近づきます。「回答がないときは、返金を選択したものとみなす」という書き方は、利用者の側に有利にみなすものなので、この問題は小さくなります。

書き方の例(一般的な例) 選択と回答の書き方

代わりの提供の決め方

よくある書き方当社は、代替の内容を合理的に定め、お客様は、これに従うものとします。
整えた書き方申込者は、全額の返金、別の日程への振替、当社が提案する代わりの提供のいずれかを選択できます。代わりの提供の内容、実施条件、料金は、受諾の前に、申込み時の内容との差額とあわせて当社が示します。

理由事業者が一方的に決めるのではなく、利用者が選択できる形にして、選択に必要な情報を事前に示す。

回答がないとき

よくある書き方期限までに回答がない場合は、振替を承諾したものとみなします。
整えた書き方期限までに回答がない場合は、申込者は返金を選択したものとみなします。

理由沈黙を、不利な方向にみなさない。利用者に有利な方向にみなす書き方にとどめる。

条文例事業者の事情で提供できないとき(書き方の例)

  1. 当社は、天候その他当社の責めに帰することができない事由、または当社の責めに帰すべき事由により、本サービスの全部または一部を提供できないと判断したときは、その旨と理由を、申込者に速やかに通知します。
  2. 申込者は、前項の通知を受けたときは、次のいずれかを選択することができます。(1) 受領済みの料金のうち、提供していない部分に相当する額の返金。(2) 別の日程への振替。(3) 当社が提案する代わりの提供の受諾。
  3. 申込者は、通知を受けた日の翌日から起算して○日以内に、前項の選択を、当社の受付の窓口に回答します。この期間内に回答がないときは、申込者は(1)を選択したものとみなします。
  4. 申込者が代わりの提供を受諾する場合、当社は、受諾の前に、その内容、実施条件および料金を、申込み時の内容との差額とあわせて示します。差額は、実施後に精算します。
  5. 本条による返金には、キャンセル料、決済手数料その他の控除を行いません。返金に係る振込手数料は、当社が負担します。

この例は、事業者に原因がある場合と、双方に原因がない場合の両方に使える形にしています。分ける場合は、第5項の控除の扱いや、損害の補償の有無を、場面ごとに分けて書きます。

一部だけ実施できたとき:按分の考え方

提供の全部が止まるとは限りません。予定のうち一部だけが実施でき、一部は実施できなかった、という場面があります。この場合の返金は、全額か、ゼロかの二択ではなく、按分で考えます。

按分の出発点は、民法648条3項です。委任が履行の中途で終了したときなどに、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求できるとされています。法律行為でない事務の委託には、委任の規定が準用されます(656条)。役務の契約が準委任に当たるかどうかは契約の内容によりますが、「実施した割合に応じて対価を受け、実施していない部分は返す」という考え方は、一部実施の場面の基本になります。按分の単位は、取引ごとに決めます。

一部実施の按分の単位(一般的な例)

場面按分の単位返す部分
回数で提供する講座の一部の回が休講回数休講の回に相当する対価
期間で提供する会員サービスが一定期間停止日数または期間停止期間に相当する対価
一日に複数のプログラムを提供し一部が中止プログラム単位中止したプログラムの対価(料金の内訳で切り出せる場合)
主たるサービスは実施でき、付随的なサービスだけが不実施料金の内訳の項目付随的なサービスの対価。内訳で切り出せないときは、合理的な範囲での代わりの提供または一部の返金

特に注意したいのは、付随的なサービスです。「付随的なサービスであり、不実施であっても、全体が履行されているときは返金しない」という書き方は、多くの契約書で見られます。主たるサービスの価値が損なわれていないなら、全額返金は要らないという発想は理にかなっています。ただ、付随的なサービスにも対価が含まれているなら、その部分を返さない理由は別に要ります。料金の内訳に、付随的なサービスの対価を示しておけば、不実施の部分だけを返金することができ、「全額か、なしか」の争いを避けられます。

オプションの扱いも、同じ考え方で整理します。事業者が既に発注や手配を済ませているオプションは返金の対象にせず、手配の前のオプションは返金の対象にする、という分け方です。この場合は、「手配済み」の意味(物品の確保、サービスの予約、外部への発注が完了した状態など)を書いておきます。

代わりの提供を利用者が受諾した場合は、提供された部分の対価は返金の対象にならず、差額を精算することになります。受諾の前に、内容、実施条件、料金を示しておくことが、後の争いを防ぎます。

書き方の例(一般的な例) 一部実施の書き方

付随的なサービス

よくある書き方付随的なサービスが実施されなかった場合でも、サービス全体が履行されているときは、返金しません。
整えた書き方付随的なサービスが実施されなかった場合、料金の内訳に示した当該サービスの対価を返金します。ただし、当該サービスの実施が利用者の事情によるときは、この限りではありません。

理由付随的なサービスに対価が含まれている以上、不実施の部分は返す。利用者の事情による不実施は、別に扱う。

不可抗力の定義と、中止の判断権限

事業者都合の規定では、「不可抗力」という言葉が中心に置かれます。ここで気をつけたいのは、不可抗力の範囲を広げすぎないことです。

不可抗力の定義としてよく見られるのは、天災、感染症の流行、戦争、暴動、政府による規制、大規模な停電や通信障害を列挙し、「その他合理的な回避努力を尽くしても防止できない事象」とまとめる書き方です。これ自体は一般的な書き方です。広げすぎとなるのは、列挙の中に、事業者側の事情を混ぜる場合です。たとえば、「講師の体調不良」「設備のトラブル」「運営上のやむを得ない事情」は、事業者の側の事情であって、通常は不可抗力に当たりません。これらを不可抗力の例示に入れて免責の理由にすると、事業者に責任がある場面の返金を封じる定めになり、消費者契約法8条の2や10条の問題になり得ます。「システム障害」「通信障害」も、自社の保守が原因のものと、外部の大規模な停止とでは、場面が違います。「当社の管理が及ばない外部の」と限定して書くのが安全です。

また、不可抗力によって契約が終了した場合に「既に支払われた料金は返金しない」と書く例があります。提供していない部分の対価を返さないという意味であれば、双方に責任がない場面で債権者が対価の支払いを拒める(民法536条1項)ことや、解除後の原状回復(545条)と整合しません。提供していない部分は返す、と書くのが基本です。

もう一つ、中止の判断をする権限の書き方があります。安全に関わる判断、たとえば、屋外での催しの実施や、機材の使用の可否は、現場の責任者が行うのが合理的であり、その旨を書くことは自然です。けれども、中止の判断権限と、中止後の返金の範囲は、別の問題です。「不可抗力に当たるかどうかは当社が判断し、当社が不可抗力と判断したときは責任を負わない」という書き方は、事業者に責任の有無を決定する権限を付与する条項(消費者契約法8条1項1号)に近づきます。判断の基準(警報の発令、数値の基準、管理者の指示など)を事前に書いておき、中止の判断と返金の要否を、基準で結びつけると、恣意的という批判を減らせます。

条文例不可抗力の定義と返金(書き方の例)

  1. 本ポリシーにおいて「不可抗力」とは、天災、感染症の流行、戦争、暴動、法令または公的機関の命令・規制の変更、その他当社の管理が及ばない外部の事由であって、合理的な回避努力を尽くしても防止できないものをいいます。
  2. 前項の不可抗力には、当社の従業員または委託先の事情(体調不良を含みます。)、当社の設備の不具合、当社の保守の不備による障害は含まれません。
  3. 当社は、不可抗力により本サービスを提供できない場合、その事由が生じたことを示す客観的な事実(公的機関の警報の発令、外部の事業者による障害の公表など)を、申込者の求めに応じて示します。
  4. 不可抗力により本サービスの全部または一部を提供できなかった場合も、当社は、提供していない部分に相当する料金を返金します。

事業者側の事情を不可抗力から外す書き方です。外した事情は、事業者に責任がある場面として、返金や補償の定めに結びつけます。

確認の問いと理由不可抗力の条項を見直すときの問い

  1. 不可抗力の例示に、事業者側の事情が混ざっていませんか。

    講師の体調不良、設備トラブル、運営上のやむを得ない事情は、通常は事業者の事情。混ぜると、事業者に責任がある場面の返金を封じる定めになり得る。

  2. システム障害や通信障害は、自社が原因のものを除いていますか。

    自社の保守の不備による障害は、事業者に責任がある場面。外部の大規模な停止と区別して書く。

  3. 不可抗力に当たるかどうかを、事業者だけで決める書き方になっていませんか。

    責任の有無を事業者に決めさせる条項は、無効とされる類型に近い。判断の基準を書き、客観的な事実で判断できるようにする。

  4. 中止の後、提供していない部分は返す、と書いてありますか。

    不可抗力による終了でも、提供していない部分の対価を保持する根拠は弱い。返金を原則とする。

サービス終了と、前払い分の精算

事業者の都合による最大の中止は、サービスそのものの終了です。月額や年額で前払いを受けている場合、終了の時点で、提供していない期間の対価が残っています。この精算を、終了の条項とあわせて書いておく必要があります。

「当社は、事業運営上必要と判断した場合、本サービスを終了できる」とだけ書くと、終了の自由を定めているにすぎず、前払い分の扱いは何も決めていません。契約期間の途中で終了するなら、提供していない部分は、事業者の側で履行できなくなった部分であり、民法の下では、解除や対価の支払い拒絶、原状回復の対象になり得ます。終了の自由を定めても、その自由が、前払い分の未提供部分の対価を保持できることまで意味するわけではありません。

契約内容を変更する形で終了させる方法も考えられますが、定型約款の変更が認められるのは、変更が相手方の一般の利益に適合するとき、または、契約をした目的に反せず、かつ変更の必要性、変更後の内容の相当性、変更をすることがある旨の定めの有無などに照らして合理的なときです(民法548条の4第1項)。サービスを終了させる変更が、契約をした目的に反しないといえるかは、慎重に見る必要があります。

サービス終了のときの精算の順序

  1. 終了日を決め、予告する終了の日と、終了の理由、予告の期間を決めて周知する。予告の期間は、利用者が代わりの手段を探せる長さを考える。
  2. 前払い分を洗い出す月額の前払い、年額の前払い、回数券、チャージした金額など、提供していない部分の対価が残っている項目を洗い出す。
  3. 精算の方法を決める未経過の期間や、未使用の回数に応じて計算する。年額割引を適用している場合の扱いも、事前に決めておく。
  4. 返金の方法と期限を通知する返金先の確認、期限、方法を、利用者に通知する。
  5. データの取扱いを決める利用者のデータの取り出しの期間、削除の時期、問い合わせの窓口を決めて通知する。

条文例サービスの終了と精算(書き方の例)

  1. 当社は、本サービスを終了する場合、終了の日の○日前までに、終了の日とその理由を、申込者に通知します。
  2. 終了の日までに提供していない部分に相当する料金(前払いの月額、年額および回数券を含みます。)は、当社が精算し、返金します。
  3. 前項の精算の額は、前払いの料金を、提供の単位(日数または回数)で按分して計算します。年額の割引が適用されている場合も、終了を理由として、割引を取り消して再計算することはしません。
  4. 当社は、終了の日の後○日間、申込者が自己のデータを取り出すことができる期間を設けます。

終了の自由を定める条項と、精算の条項を、同じ条にまとめておくと、前払い分の扱いが抜けにくくなります。

なお、ポイント、チケット、コードのように、金額や数量に応じた対価を得て発行され、物品や役務の対価として使えるものは、資金決済に関する法律の前払式支払手段(同法3条1項)に当たることがあります。前払式支払手段の発行者が業務を廃止したときは、保有者に残高を払い戻す義務などの規制が及びます(同法20条1項)。この領域は、業種ごとのガイドで扱うため、ここでは、前払いの仕組みの内容次第で、別の法律の規制が及ぶことがある、という点にとどめます。

返金に伴う費用と、利用者への連絡

事業者の事情による返金は、利用者の都合による解約とは、控除の考え方が違います。利用者の都合による解約では、キャンセル料や決済手数料などの控除が問題になりますが、事業者の事情による返金では、これらの控除は置かないのが整合的です。振込手数料も、事業者が負担するのが基本です。ポリシーの中で、利用者の都合による返金と、事業者の事情による返金とで、控除の有無を書き分けておきます。

もう一点、利用者が負担した付随の費用、たとえば交通費や宿泊費があります。事業者の責めに帰すべき事由で提供できなかった場合に「交通費、宿泊費その他の費用は一切補償しない」と書くと、事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項(消費者契約法8条1項1号)に当たり得ます。一部の免除であっても、事業者の故意または重大な過失による場合の責任の一部を免除する条項は無効で(同項2号)、重大な過失を除く過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていない一部免除の条項も無効です(同条3項)。一方、双方に責任がない不可抗力の場面では、そもそも賠償責任が生じないため、補償しない旨を書くことは自然です。場面を分けて書く理由は、ここにもあります。

利用者への連絡は、提供できないと分かった時点で速やかに行い、次の事項を伝えます。

  • 提供できない理由と、対象の範囲(全部か一部か)。
  • 利用者が選べる選択肢(返金、振替、代わりの提供)。
  • 回答の方法と期限、回答がないときの扱い。
  • 返金を選んだ場合の方法と期限、控除の有無。

返金の事由の確定の時点、返金の期限の置き方、カード決済の取消しと振込の使い分けは返金の手続・期限・手数料の決め方で扱います。

起きがちなこと

事業者の事情で提供できない場面で起きがちな食い違いを挙げます。多くの契約書で見られる傾向として挙げる一般的な例です。

起きがちなこと

  • 不可抗力の例示に、講師の体調不良や設備のトラブルが混ざり、事業者の責めに帰すべき場面でも免責される書き方になる。
  • 「中止か否かは当社が判断する」と書かれているが、判断の基準がなく、後から恣意的と受け取られる。
  • 回答がないときの扱いが「振替を承諾したとみなす」になっており、沈黙が利用者の不利に働く。
  • 代わりの提供の内容と料金が「当社が定める」としか書かれておらず、受諾の前に差額が分からない。
  • 付随的なサービスだけが不実施だったのに、料金の内訳がないため、全額か、ゼロかの争いになる。
  • 事業者の事情による返金でも、キャンセル料や決済手数料が控除される書き方のままになっている。
  • サービス終了の条項に、前払い分の精算が書かれていない。
  • 交通費や宿泊費などの付随の費用を、事業者の責めに帰すべき場面でも補償しない、と書いている。

返金要求を受けた後の仕分けと記録は返金要求を受けたときの仕分け・記録・対応で整理します。

よくあるご質問

悪天候で中止にした場合、全額返金が必要ですか?

悪天候が、事業者にも利用者にも責任のない事由によるものなら、提供できなかった部分については、利用者は対価の支払いを拒め(民法536条1項)、契約を解除することもできます(542条1項1号)。規約では、全額返金、別日程への振替などの選択肢を示し、利用者が選べるようにしておくのが一般的です。一部が実施できているときは、実施した部分の対価を除いて、提供していない部分を返す按分の考え方が基本になります。

講師の急病で休講にしたとき、振替だけで返金しなくてもよいですか?

振替を用意すること自体は良い対応ですが、返金を認めない書き方は一方的と見られるおそれがあります。振替の日程が利用者の都合に合わない場合もあります。利用者が、振替と返金を選べるようにしておく書き方が整合的です。講師の病気が事業者の責めに帰すべき事由に当たるかどうかは、事情によって見方が分かれますが、いずれの場面でも、提供していない部分の対価を返す余地を残しておくと、争いになりにくくなります。

「不可抗力」はどこまで書けばよいですか?

天災、感染症の流行、戦争、暴動、政府による規制、大規模な停電や通信障害のような、事業者の管理が及ばない事象を列挙し、「その他合理的な回避努力を尽くしても防止できない事象」とまとめる書き方が一般的です。講師の体調不良、設備トラブル、運営上のやむを得ない事情のような事業者側の事情は、不可抗力に混ぜず、別の場面として扱います。不可抗力に当たるかどうかを事業者だけで決める書き方は避け、判断の基準を書いておきます。

サービスを終了するとき、前払い分は返金が必要ですか?

契約期間の途中でサービスを終了する場合、提供していない部分の対価を保持する根拠は弱く、未経過の期間や未使用の回数に応じた精算が基本になります。終了できる旨を定めても、それは終了の自由を示すだけで、前払い分の精算を免れるものではありません。終了の予告、精算の計算、返金の方法、データの取扱いを、終了の条項とあわせて書いておきます。ポイントやチケットなどの仕組みによっては、前払式支払手段として別の法律の規制が及ぶことがあります。

一部だけ実施できたとき、返金額はどう計算しますか?

提供の単位で按分するのが基本です。回数で提供するなら回数、期間で提供するなら日数や期間、複数のプログラムならプログラム単位で、実施できなかった部分の対価を計算します。主たるサービスは実施できて、付随的なサービスだけが不実施の場合は、料金の内訳で付随的なサービスの対価を切り出せるようにしておくと、不実施の部分だけを返金できます。代わりの提供を受諾した場合は、提供された部分の対価は返金の対象にならず、差額を精算します。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、取引の内容や契約の経緯によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で参照できます。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 特定商取引法ガイド / 国民生活センター

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