個人のお客様向けに解約・返金・キャンセルのルールを定める方へ無効にならない、
解約・返金の規定を
解約や返金の規定は、「返金しません」の一文で済ませると、かえって無効や取消しの争いを招きます。まず見分けるのは、その取引にどの出口が開いているかです。クーリング・オフ、通信販売の法定の返品、特定継続的役務提供の中途解約、消費者契約法による取消しと条項の無効、民法による解除、そして契約で定める約定の解約があり、取引の型によって使える出口が違います。そのうえで、キャンセル料を日数や費目でどう段階に分けるか、「平均的な損害」をどう考えるか、返金の期限と方法と控除できる費用をどう決めるか、事業者の都合で提供できなくなったときの返金、月額・年額の自動更新の解約と締め日、分割払いやカード決済がからむときの整理、解約の受付方法と効力の発生時点、広告・申込み画面・規約・特商法表記の食い違いの防ぎ方まで、順に決めていきます。このガイドは、業種ごとの解説ではなく、どの業種にも共通する「ルールの設計手順」を、消費者契約法・特定商取引法・民法・割賦販売法の条文に沿って整理したものです。教室やサロン、オンライン講座、ネットショップ、会員制サービスなど、個人のお客様を相手に解約・退会・返金・キャンセルの規定を新しく作る方、見直したい方が、条文を一次資料で確かめながら読み進められるように、テーマごとに詳しくまとめています。
規定を新しく作る・見直す方

取引の型を見分けてから、規定を組み立てる
解約・返金・キャンセルの規定は、「返金しない」と書くところから始めると行き詰まります。先に、取引の型と、その型に開いている法定の出口を確かめ、そのうえで約定の解約、金額、手続、表示の順に決めていきます。
規約、契約書、キャンセルポリシー、特商法表記、申込み画面は、役割が違います。どの書類に何を書き、食い違ったらどれを優先するかも、最初に決めておきます。
規定を作る前に、提供する内容が、一度で終わるもの(商品の販売、単発のレッスン)か、期間をまたぐもの(月額会員、回数券、年間契約)かを確かめます。後者は、解約の時期によって返す金額が変わるため、提供済みの部分と未提供の部分を切り分けられる書き方が必要になります。
どの出口が開くか知りたい方

クーリング・オフ、返品、中途解約の見分け方
クーリング・オフがあるのは、訪問販売や電話勧誘販売など、法律で定めた取引の型だけです。ネットショップなどの通信販売には、クーリング・オフはなく、商品の法定の返品の制度があります。
さらに、役務には通信販売の法定の返品は及びません。出口の種類ごとに、起算点、効力が生じる時点、費用の負担がどう違うかを比べます。
返金しない条項に不安がある方

無効になる条項の見つけ方と、直し方
「いかなる場合も返金しない」「一切の責任を負わない」といった書き方は、消費者契約法により、その部分が無効とされることがあります。条項の類型ごとに、点検の観点を整理します。
返金しないという取り決めも、既に提供した分の対価、手配済みの実費、預り金、違約金に分けて書くと、通用する範囲がはっきりします。
規約の中の「返金しません」の一文だけを直しても、申込み画面や広告の表示が違えば、意図したとおりには働きません。条項を直すときは、表示や運用との食い違いがないかも併せて見ます。
キャンセル料を決めたい方

日数区分・費目別・回数消化の型と、金額の考え方
キャンセル料は、割合型、費目別型、回数消化型、定額型に分かれます。型を決めたうえで、日数の数え方、通知が届いた時点、受付時間、無断の不参加の扱いを決めます。
消費者契約法9条1項1号は、解除に伴う違約金のうち、同種の契約の解除で事業者に生ずる平均的な損害の額を超える部分を無効とします。金額の根拠をどう整えるかを整理します。
継続課金や分割払いを扱う方

自動更新、締め日、返金の手続、分割払い
月額・年額の継続課金では、申込み画面の表示、解約の締め日、日割りをしない書き方、更新停止の期限が問題になります。誤認させる表示があれば、申込みの取消しの対象にもなります。
返金の段取りでは、事由の確定、期限、カード決済の取消しと振込の使い分け、手数料の負担を決めます。分割払いやクレジット会社が入る場合は、その仕組みも一般論で整理します。
表示の食い違いと返金要求への備え

広告・申込み画面・規約をそろえる
返品や解除の条件は、広告、申込み画面、規約、契約書面、特商法表記の複数に現れます。内容が食い違うと、書類のどれを信頼してよいか分からなくなり、争いが長引きます。
返金の要求や条項の指摘を受けたときの仕分け、事実確認と記録、返金額の計算の順序も、あらかじめ決めておくと落ち着いて対応できます。
このガイドの解説ページ
よくあるご質問
「返金しません」と一文書いておけば足りますか?
足りません。事業者の債務不履行による損害賠償責任を全部免除する条項は、消費者契約法8条1項により、その部分が無効とされます。解除に伴う違約金も、同法9条1項1号により、同種の契約の解除で事業者に生ずる平均的な損害の額を超える部分は無効です。さらに、クーリング・オフなど法律上の出口は、規約で消すことができません。既に提供した分の対価、手配済みの実費、預り金、違約金に分けて書き、法定の出口との関係も明示します。
自社のサービスにクーリング・オフはありますか?
取引の型によります。クーリング・オフが法律に定められているのは、訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供、連鎖販売取引、業務提供誘引販売取引、訪問購入などです。ネットショップなどの通信販売にはクーリング・オフはなく、商品や特定権利については、特定商取引法15条の3により、引渡しから8日以内の返品が認められます。ただし、広告に返品の特約を表示していれば、この返品の制度は働きません。個人のお客様でなく、営業のための契約には、同法26条1項1号により、これらの規定は適用されません。
キャンセル料は何割まで取れますか?
法律に一律の上限の割合はありません。消費者契約法9条1項1号は、解除の事由や時期などの区分に応じて、同種の契約の解除で事業者に生ずる平均的な損害の額を超える部分を無効とします。そのため、時期の区分ごとに、人件費や手配済みの費用、他のお客様への再販の可能性などを積み上げて、金額の根拠を説明できる形にしておきます。お客様から説明を求められた場合に、算定の根拠の概要を説明する努力義務も同条2項に定められています。
月額の会員サービスで、解約の締め日を決めておくべきですか?
決めておく必要があります。月の途中の解約が翌月分の請求に及ぶのかどうかが決まっていないと、毎月のように争いが生じます。自動更新の停止の期限、日割りをしない場合の書き方、解約の受付の方法と効力の発生時点を決めて、申込み画面にも見える形で表示します。通信販売で申込みを受ける画面には、特定商取引法12条の6により、分量や代金など一定の事項を表示しなければならず、誤認させる表示があれば、同法15条の4により、申込みの意思表示を取り消されることがあります。
規約に返品の条件を書けば、広告に書かなくてもよいですか?
通信販売の返品の特約は、広告に表示してはじめて、法定の返品の制度を排除するものとして働きます(特定商取引法15条の3第1項ただし書)。規約の奥にだけ書いても、広告に表示がなければ、引渡しから8日以内の返品が認められます。ネットでの申込みのような電子消費者契約では、広告に表示したうえで、さらに主務省令で定める方法でも表示することが求められます。広告、申込み画面、規約、特商法表記で、返品・解除の条件を同じ内容にそろえておくことが大切です。
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運営事務所・ご相談のご案内監修:アトラス行政書士法人(代表社員 荒木素子・特定行政書士) 最終確認日:2026年10月22日