キャンセルポリシーの作り方:型を選び、起算点と例外を順に決める

キャンセルポリシーは、金額の表よりも、表の外側の取り決めで争いが起きます。型の選び方、日数の数え方、通知の到達、例外、優先関係を、順に決める手順を整理します。

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「何日前から」と書いても、どの日から数えるのか、通知がいつ届いたことになるのかが書かれていなければ、表の金額が正しくても運用で行き詰まります。

このページの要点

  • 割合型・費目別型・回数消化型・定額型から軸になる型を一つ選ぶ。費目の事情が違うなら、総額一律の率より費目別の算定が説明しやすい。
  • 日数の数え方は契約で別段の定めができる(民法138条)。起算の日、暦日か営業日か、時刻の基準を明示する。
  • 通知は到達した時から効力を生じる(民法97条1項)。営業時間外の受信も、受信の時刻を基準にする書き方が整合的。
  • 無断の不参加・遅刻・日程変更・再販・差額請求を表の外で整理し、規約・個別条件との優先関係を一つにする。

結論:型を一つ選び、数え方・到達の時点・例外・優先関係を順に決める

キャンセルポリシーは、「何日前からいくらかかるか」を表にしたものと考えられがちです。けれども、表そのものよりも、表の外側の取り決めのほうで争いが起きます。何日前を、どの日から数えるのか。通知はいつ届いたことになるのか。無断で来なかったときや遅れたときは、どう扱うのか。日程変更はキャンセルと同じなのか。キャンセル待ちの人に枠を回せたときはどうするのか。ポリシーと規約が食い違ったときはどちらが優先するのか。これらが決まっていないと、表の金額が正しくても、運用で行き詰まります。

このページの結論は、次の五つです。

  • 型を一つ選ぶ。割合型、費目別型、回数消化型、定額型のどれを軸にするかを、取引の中身から決める。
  • 日数の数え方を文章で決める。起算の日、暦日か営業日か、時刻を、条文の中で明示する。
  • 通知がいつ届いたことになるかを決める。受付の窓口、受付の時間、時間外の扱いを書く。
  • 例外を、表の外に整理する。無断の不参加、遅刻、日程変更、事業者都合の中止、再販できたときの扱いを分けて書く。
  • 優先関係を一つにする。規約、個別の条件、ポリシーのどれが先かを書き、先に置いた書類が内容を備えているか確かめる。

キャンセル料の金額の根拠、つまり「平均的な損害」の考え方はキャンセル料と平均的な損害の考え方で扱います。ここでは、金額の前提になる「型と数え方と例外」の設計に絞ります。事業者の都合で提供できないときの返金は事業者の都合・不可抗力で提供できないときの返金の決め方で別に扱うため、このページでは触れる範囲を限ります。

四つの型の比較:割合型・費目別型・回数消化型・定額型

キャンセル料の決め方は、大きく四つの型に分かれます。型は混ぜて使うこともできますが、まず軸になる型を一つ決めると、条文が整理しやすくなります。

キャンセル料の四つの型

型仕組み向く取引弱点と整え方
割合型利用料金の総額に対して、時期の区分ごとの率を定める内容が単純で、費目の違いが小さい取引(1回の施術、1回の予約、1回のイベントなど)総額に一律の率をかけると、費目ごとの事情が反映されない。区分ごとの率の根拠を説明できるようにする
費目別型費目ごとに時期の区分と率を定め、合算する自社の提供分と、第三者が手配する分が混ざる取引規定が複雑になる。費目の定義を先に置き、第三者の分は実費を基礎にする
回数消化型回数券やチケットの回数から、キャンセルした予約の分を消化する定期的に通う取引(教室、施術、トレーニングなど)期限と返金の関係、消化の条件(期限後のキャンセルのみ消化など)を書く
定額型時期の区分ごとに、一定額を定める単価が比較的小さい、予約の拘束がはっきりした取引時期の区分がないと過大になりやすい。額が平均的な損害に収まるかを確かめる

割合型。総額に率をかける方法で、最も分かりやすい反面、総額の中に性質の違う費目が混ざっていると、率の根拠を説明しにくくなります。たとえば、事業者自身の人件費や枠の確保にあたる部分と、第三者に支払う費用にあたる部分とでは、解約の時期ごとに戻らなくなる割合が違います。それを総額に一律の率でかけると、一方では過大に、他方では過小になります。

費目別型。自社の提供分と、第三者が手配する分が混在する取引では、費目ごとに区分と率を定め、合算する形が向きます。第三者に支払う費用は、その第三者との関係で実際に戻らなくなる金額を基礎にします。この場合、条文には、費目の定義(どれが自社の提供分で、どれが第三者に手配する分か)、算定の基礎(第三者との関係で実際に生じる費用)、合算の方法(費目ごとに算定し、総額に一律の率はかけないこと)を書きます。第三者の規定に連動させる書き方をするなら、利用者がその規定を確認できるようにしておくことが前提です。

回数消化型。回数券やチケットは、予約を入れた時点で1回分が消化されるのか、キャンセルが期限を過ぎたときだけ消化されるのかを書きます。回数券の有効期限が切れたときの扱い、残りの回数の払戻しの有無も、キャンセルの条文とは別に書いておきます。前払いの回数券は返金との関係で整理が必要になるため、返金の扱いは「返金しない」条項の書き方の区分に沿って決めます。

定額型。キャンセル料を一定額で定める型です。額が小さければ争いになりにくい反面、時期の区分を設けないで一律の額にすると、早い時期のキャンセルでも同じ額を負担することになり、事業者に生ずる損害との開きが問われます。時期の区分を設け、区分ごとに額を変えるのが基本です。

書き方の例(一般的な例) キャンセル料の書き方

総額一律の率

よくある書き方キャンセル料は、キャンセルの時期に応じ、利用料金の総額に対して次の率を乗じた額とします。
整えた書き方キャンセル料は、費目ごとに、次の表の区分に応じて算定し、合算した額とします。利用料金の総額に一律の率を乗じるものではありません。第三者に支払い、返還を受けられない費用は、実際に生じた額を基礎にします。

理由費目ごとに戻らなくなる時期が違う。費目ごとの算定にしておくと、率の根拠を費目ごとに説明できる。

曖昧な発生条件

よくある書き方キャンセルの場合は、状況に応じてキャンセル料が発生することがあります。
整えた書き方キャンセル料は、キャンセルの申出が当社に到達した時刻が属する区分に応じて、次の表のとおり発生します。表にない場合は、発生しません。

理由「状況に応じて」「場合があります」は、利用者が申込み前に金額を予測できない。区分と額を表にし、表にないものは発生しないと書く。

条文例費目別型のキャンセル料(書き方の例)

  1. キャンセル料は、本サービスの費用を次の二つに分け、区分ごとに算定した額を合算した額とします。(1) 当社が自ら提供する部分の費用。(2) 当社が第三者に委託または手配する部分の費用(以下「第三者手配費用」といいます。)。
  2. 前項(1)の費用のキャンセル料は、キャンセルの申出が当社に到達した時刻が属する次の表の区分に応じて、当該費用に表の率を乗じた額とします。
  3. 第三者手配費用のキャンセル料は、当社が第三者に支払い、または支払う義務を負い、かつ返還を受けられない額(以下「戻らない費用」といいます。)とします。戻らない費用の内訳は、申込者の求めに応じて説明します。
  4. 第1項の算定は区分ごとに行うものとし、利用料金の総額に一律の率を乗じるものではありません。

表の区分と率は、取引の事情に応じて別に定めます。各区分で事業者に生ずる損害を説明できる根拠を、あわせて整理しておく前提です。

日数の数え方と起算点を、条文で明示する

キャンセル料の区分は、「利用日の○日前から」「○日前まで」と、日数で書かれます。ここで食い違いが起きやすいのが、日数の数え方です。「利用日の2日前」とは、利用日の2日前の日の何時までを指すのか。利用日の前日を1日前と数えるのか、利用日当日を数に入れるのか。営業日で数えるのか、暦日で数えるのか。休業日や年末年始はどう扱うのか。文章に書いていなければ、読む人によって数え方が違います。

民法は、日、週、月または年によって期間を定めたときは、期間の初日は算入しない(初日不算入)と定め(140条本文)、期間はその末日の終了をもって満了すると定めます(141条)。期間の末日が休日などに当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は翌日に満了します(142条)。ただし、これらの規定は、法令や裁判上の命令に特別の定めがある場合、または法律行為に別段の定めがある場合を除いて適用されます(138条)。つまり、契約で別の数え方を定めれば、そちらが先になります。そして、民法の期間の計算の規定は、期間の末日が休日に当たるとき翌日に満了するかどうかを決めるにとどまり、キャンセルの受付の期限が休日に当たる場合に前倒しになるのか、延びるのかまでは、決めてくれません。

時刻の書き方にも、二通りあります。「利用日の○日前の○時まで」と、日と時刻を組み合わせる書き方と、「利用日の前日まで」と日だけで書く書き方です。日だけで書くと、「前日」の何時までが前日なのかが分かりません。前日の終了(午後12時)までなのか、営業時間の終了までなのかで、夜間の連絡の扱いが変わります。営業時間を基準にするなら、営業時間を条文か別表に書いておく必要があります。

営業日で数える書き方は、事業者の処理の都合には合いますが、利用者には営業日のカレンダーが見えません。営業日で数えるなら、営業日の定義と、年末年始や臨時の休業を知らせる方法を書いておく必要があります。暦日で数えるほうが、利用者にも事業者にも、記録で確かめやすくなります。

そこで、条文の中で、次の四点を明示します。

  • 起算の日。利用日を基準にして、利用日の前日を「1日前」と数えるのか、利用日を除いた暦日で数えるのかを決めて書く。
  • 暦日か営業日か。暦日で数えるなら、休業日や年末年始も数に入る。営業日で数えるなら、営業日の定義(休業日を除く日など)を書く。
  • 時刻。「前日まで」「○日前の○時まで」と書く場合は、時刻の基準(日本標準時)を書く。
  • 期限が休業日に当たるとき。前の営業日に繰り上げるのか、休業日でも受け付けるのかを決めて書く。

条文例日数の数え方(書き方の例)

  1. 本ポリシーにおける「利用日の○日前」とは、利用日の前日を1日前として、暦日により数えた日をいいます。
  2. 前項の日数は、日本標準時における暦日を基準とし、当社の休業日を含めて数えます。
  3. キャンセルの申出は、当社が受付の窓口で受信した時刻を基準として、どの区分に当たるかを判断します。

「受付の窓口」は、別の条で、メール、フォームなど利用者が使える手段として定義しておく前提です。

日数の起算や期間の数え方そのものは、解約や契約の終了にも共通する論点です。このページでは、キャンセル料の区分に必要な要点にとどめます。

通知の到達と受付時間:いつ届いたことにするか

区分の基準になるのは、「キャンセルの意思表示がいつ届いたか」です。民法97条1項は、意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる、と定めます。同条2項は、相手方が正当な理由なく通知が到達することを妨げたときは、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす、と定めます。キャンセルの申出がいつ届いたかを基準にする、という書き方は、この到達の考え方と合っています。

問題になるのは、営業時間外の連絡です。夜間にメールやフォームで送られた連絡は、いつ到達したことになるのか。次の営業日の始業時に確認したときか、メールを受信した時刻か。営業時間外の受付を翌営業日の開始時刻に到達したものとみなす書き方は、利用者に不利に働く場合があります。たとえば、前日の深夜に送った連絡が、当日扱いの区分に入ってしまうと、キャンセル料の区分が一つ上がります。受信した時刻を基準にし、受信の記録(メールの受信日時、フォームの送信完了の記録)で判断する、と書くほうが、事業者にとっても争いになりにくくなります。

書き方の例(一般的な例) 到達の時点の書き方

営業時間外の扱い

よくある書き方営業時間外に受け付けた連絡は、翌営業日に受け付けたものとして取り扱います。
整えた書き方キャンセルの申出は、当社が受付の窓口で受信した時刻に到達したものとして取り扱います。営業時間外に受信した場合も同様です。当社は、受信の日時を記録します。

理由受信した時刻を基準にすると、利用者は送信の記録で自分の申出の時期を確かめられる。事業者も、受信の記録で区分を判断できる。

受付の手段

よくある書き方キャンセルは、当社所定の方法により行ってください。
整えた書き方キャンセルは、メール、申込みフォームまたは予約画面のいずれかにより行うことができます。電話で連絡を受けた場合は、受付の窓口に記録したうえで、同じ時刻に申出があったものとして取り扱います。

理由利用者が実際に使える手段を列挙する。電話などの手段を受けつける場合は、記録の取り方まで書く。

受付の窓口の種類、受付の時間、本人確認の限度、効力が生じる時点は、解約の手続全般に共通する論点でもあります。詳しくは解約の受付窓口・方法・効力発生時点の決め方で扱います。ここでは、キャンセル料の区分を決める基準として、到達の時点を書いておく、という点だけを押さえます。

無断の不参加、遅刻、日程変更を、表の外で整理する

キャンセル料の表は、事前に連絡があったキャンセルを想定しています。連絡のない不参加や、遅刻、日程変更は、表の外の取り決めで整理しておく必要があります。

無断の不参加。連絡なく集合時刻に来なかった場合は、当日のキャンセルに準じて扱う、と書くのが一般的です。ここで押さえたいのは、当日のキャンセルの区分と同じ額にするのか、さらに高い額にするのか、という点です。事業者に生ずる損害の面では、連絡があった場合と、なかった場合とで、大きな差が出ないことも多いはずです。連絡のない場合に別の高い率を定めるなら、その根拠が必要になります。

遅刻。遅刻で提供が難しくなったときの扱いは、二段に分けて書くと運用しやすくなります。第一に、遅刻しても提供できる範囲があるときは、時間を短縮して提供し、料金の減額や返金はしない、という扱い。第二に、遅刻により提供そのものが困難になったときは、当日のキャンセルとして扱う、という扱いです。第二の判断基準を「事業者が合理的に判断したとき」とだけ書くと、利用者には予測できません。判断に使う事情(必要な所要時間、次の予約、外部の手配の拘束など)を列挙しておくと、説明がしやすくなります。

日程変更(リスケジュール)。日程の変更を、キャンセルとは別の取り決めとして置く事業者は少なくありません。この場合、日程変更を無制限に認めると、繰り返し延期することで、実質的にキャンセル料を免れる使われ方が生じます。そこで、変更の申出の期限、回数の上限、直前の変更はキャンセルの規定を適用すること、変更に伴って追加費用が生じる場合の精算を、日程変更の条文に書いておきます。

時期の区分と段階の例(率は伏せた一般的な例)

  1. 余裕のある時期

    キャンセル料なし

    事業者に手配の費用が生じていない時期。日程変更も追加費用なしで認めやすい。

  2. 手配が済む時期

    手配済みの費用

    第三者への発注などが済み、戻らない費用が生じる時期。費目別型なら、第三者の分から負担が始まる。

  3. 直前の時期

    自社の提供分も対象

    自社の枠や人員を、他の利用者に回す時間が少なくなる時期。自社の提供分にも負担が及ぶ。

  4. 前日・当日・無断

    最も重い区分

    再販がほぼできない時期。無断の不参加もここに含めるのが一般的だが、別の高い率を置くなら根拠が要る。

区分の数や境目の日数は、取引の内容と費用の発生の仕方で決めます。表の数字だけでなく、区分ごとに「何が戻らなくなるのか」を説明できるようにしておきます。

条文例無断の不参加・遅刻・日程変更(書き方の例)

  1. 申込者が、事前の連絡なく集合時刻に来場しない場合は、当日のキャンセルとして取り扱い、当日の区分のキャンセル料が発生します。
  2. 申込者が遅刻した場合において、遅刻により本サービスの提供が困難であると当社が判断したときは、当日のキャンセルとして取り扱います。この判断は、提供に必要な所要時間、次の予約の有無、第三者の手配の拘束その他の事情を考慮して行い、当社は、申込者の求めに応じて判断の理由を説明します。
  3. 前項の場合を除き、遅刻により提供の時間が短くなったときは、短縮した時間で提供します。
  4. 申込者は、利用日の○日前までに申請することにより、利用日を1回に限り変更することができます。変更が認められたときは、キャンセル料は発生しません。ただし、第三者の手配に伴う追加費用が生じる場合は、その実費を精算します。
  5. 前項の期限を過ぎた変更の申出、および2回目以降の変更の申出は、キャンセルとして取り扱います。

遅刻により短縮した時間の料金の扱いは、提供の単位との関係で別に決めておきます。判断を事業者が行う書き方では、判断に使う事情を条文に列挙し、求めに応じて理由を説明する旨を書いておきます。

確認の問いと理由例外の取り決めを見直すときの問い

  1. 無断の不参加は、当日のキャンセルとどう違いますか。

    同じ区分に含めるなら、その旨を書く。別の率を置くなら、事業者に生ずる損害の違いで説明できる必要がある。

  2. 遅刻で提供を打ち切る基準は、事前に読めますか。

    「事業者が判断する」とだけ書くと、利用者は予測できない。判断に使う事情を列挙しておく。

  3. 日程変更を繰り返せば、キャンセル料を免れられますか。

    回数の上限と期限がないと、日程変更が実質的な延期手段になる。回数と期限を書く。

  4. 日程変更に伴う追加費用は、実費の範囲に収まっていますか。

    日程変更の手数料は、実際に生じる追加費用の範囲に収めるのが穏当。実質がキャンセルなら、キャンセル料と同じ観点で見られる。

キャンセル待ちや再販ができたときの扱い

予約制の取引では、キャンセルが出た枠に、別の利用者を入れられる場合があります。この再販の可能性は、キャンセル料の設計に影響します。消費者契約法9条1項1号が基準にするのは、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害です。再販ができる可能性が高い取引では、平均的な損害は小さくなり、再販がほとんどできない取引では、平均的な損害は大きくなります。直前のキャンセルほど再販が難しくなる、という時期の区分は、この考え方から説明できます。

個別の再販の成否を、キャンセル料に反映させるかどうかも、設計の選択です。

  • 再販の成否にかかわらず、区分ごとの額で固定する。事務は簡単で、利用者にとっても予測しやすい。区分ごとの額が、平均的な損害を超えないことが前提になる。
  • 再販できた場合は、その分をキャンセル料から控除する。利用者の負担は小さくなるが、再販の成否を確認する事務が生じ、個別の精算になる。

どちらの書き方でも、キャンセル料の額が、区分に応じた平均的な損害の額を超えない、という前提は変わりません。額を超える部分を「別途請求する」と併記する書き方が抱える問題は、キャンセル料と平均的な損害の考え方で扱います。

キャンセル料に関わる主な条文

消費者契約法9条1項1号

解除に伴う損害賠償の額の予定・違約金を合算した額が、解除の事由・時期等の区分に応じた、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるときは、その超える部分が無効。

読むとき区分ごとに見られる。区分を設けないと、最も早い時期のキャンセルにも最も重い区分の額が及ぶ。

消費者契約法9条2項

事業者は、消費者から説明を求められたときは、損害賠償の額の予定・違約金の算定の根拠の概要を説明するよう努める。

読むとき求められたときに、区分ごとの根拠を示せるように、算定の資料を残しておく。

消費者契約法9条1項2号

支払うべき金銭を支払期日までに支払わない場合の損害賠償の額の予定・違約金は、支払期日の翌日から支払う日までの期間につき、年14.6パーセントの割合で計算した額を超える部分が無効。

読むとき差額を請求する場合の遅延損害金の上限になる。

民法420条

賠償額の予定は、履行の請求または解除権の行使を妨げない。違約金は、賠償額の予定と推定される。

読むときキャンセル料は、通常は賠償額の予定として扱われる。

キャンセル料が既に支払われた金額を上回る場合の差額の請求にも、ルールが要ります。差額を請求する方法、支払の期限、期限に遅れた場合の遅延損害金です。消費者契約では、支払うべき金銭を支払期日までに支払わない場合の損害賠償の額の予定や違約金は、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、支払期日に支払うべき額に年14.6パーセントの割合を乗じて計算した額を超える部分が無効になります(同法9条1項2号)。差額請求の遅延損害金は、この上限の範囲で定めます。

もう一点、キャンセルに伴って返金が生じる場合は、返金の方法と期限、振込手数料の負担も、あわせて書きます。返金の手続は返金の手続・期限・手数料の決め方で扱います。

ポリシー・規約・個別の条件の優先関係と、書くべき事項の一覧

キャンセルポリシーは、規約や個別の条件と、一体のものとして置かれることが多い書類です。「本ポリシーは、規約および個別条件と一体をなすものとし、内容が抵触する場合は個別条件を優先する」という書き方がよく見られます。優先関係を決めるのは良い設計ですが、次の点に気をつけます。

  • 優先する書類が、内容を備えているか。個別条件を優先すると書いたのに、個別条件にキャンセルに関する記載がなければ、優先関係が働く場面がありません。個別条件に何を書くか、書かれていないときはポリシーが適用されるのかを、補っておく。
  • 書類の順位を一つにする。「個別条件、規約、ポリシーの順」と書くなら、その順位の理由を考える。キャンセルについては、キャンセルポリシーを最も具体的な書類として、規約より先に置くほうが整合する場合がある。
  • 食い違いを作らない。優先関係の条項は、食い違いが生じたときの最後の手段にとどめ、書類間の内容を一致させることが先。

消費者契約法3条1項1号は、事業者が消費者契約の条項を定めるに当たって、権利義務の内容が、解釈について疑義が生じない明確なもので、かつ平易なものになるよう配慮する努力義務を定めています。複数の書類を重ねて読まないと金額が分からない構成は、この配慮に合わないと見られるおそれがあります。

キャンセルポリシーに書くべき事項の点検

  • 適用範囲(どのサービスに適用されるか)と、契約が成立する時点。
  • キャンセルの定義(解除、日程変更、中止との違い)。
  • 採用する型と、時期の区分ごとのキャンセル料の表。
  • 日数の数え方(起算の日、暦日か営業日か、時刻の基準)。
  • キャンセルの受付の窓口、受付の時間、到達の時点。
  • 無断の不参加、遅刻、日程変更の扱い。
  • 事業者の都合・不可抗力による中止の扱い(別条で返金を定める)。
  • 返金の方法、期限、振込手数料の負担。
  • 差額の請求の方法と期限、遅延損害金。
  • 規約、個別条件との優先関係と、施行日。

起きがちなこと

キャンセルポリシーで起きがちな食い違いを挙げます。多くの契約書で見られる傾向として挙げる一般的な例です。

起きがちなこと

  • 「○日前」の数え方が書かれておらず、利用日を含めて数えたか、除いて数えたかで、区分が食い違う。
  • 営業時間外のメールの到達が、いつなのかを決めておらず、前日の深夜に送った連絡が当日扱いになる。
  • 総額に一律の率をかけて、費目ごとの事情を反映しておらず、率の根拠を問われて答えられない。
  • 無断の不参加だけが、当日のキャンセルより高い率になっており、根拠を説明できない。
  • 日程変更の回数や期限がなく、繰り返し延期され、実質的にキャンセル料を免れる使われ方になる。
  • 遅刻で打ち切る基準が、「事業者が判断する」としか書かれておらず、利用者に予測できない。
  • 個別条件を優先すると書いたが、個別条件にはキャンセルの記載がない。
  • 差額の請求について、支払期限も遅延損害金も決まっておらず、請求の根拠が弱い。

型と数え方と例外が決まったら、ポリシーの内容を広告、申込み画面、規約、特商法表記に反映させます。複数の媒体の整合の確認は広告・申込み画面・規約・特商法表記で解約条件をそろえるで扱います。

よくあるご質問

キャンセル料は、総額の何割まで設定できますか?

法律に一律の上限の割合はありません。消費者契約法9条1項1号は、解除に伴う損害賠償の額の予定や違約金のうち、解除の事由や時期などの区分に応じた、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分を無効とします。そのため、時期の区分ごとに、事業者に生ずる費用と、他の利用者への再販の可能性を踏まえて、額を説明できる形にしておく必要があります。総額に一律の率をかけるよりも、費目ごとに算定したほうが、根拠を説明しやすくなります。

キャンセル料の日数は、利用日の何日前から数えますか?

民法の期間の計算の規定(138条から143条まで)は、法律行為に別段の定めがある場合は、その定めが先になります。そのため、契約の側で数え方を明示しておくことが大切です。起算の日(利用日の前日を1日前とするかなど)、暦日か営業日か、時刻の基準を、条文に書いておきます。休業日に期限が当たったときの扱いも、民法の規定に任せず、書いておきます。

メールの送信時刻と受信時刻のどちらを基準にしますか?

民法97条1項は、意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる、と定めています。キャンセルの申出も、事業者に到達した時を基準にする書き方が、この考え方に合います。実務では、メールの受信日時やフォームの送信完了の記録を基準にし、営業時間外の受信も、受信した時刻に到達したものとして扱う、と書くことが多く、事業者と利用者のどちらにとっても記録で確かめやすくなります。

無断キャンセルは、全額を請求できますか?

無断キャンセルを当日のキャンセルに準じて扱うことは、通常行われます。ただ、全額を請求できるかどうかは、事業者に生ずる損害との関係で決まります。当日の区分の額が、その時点での平均的な損害に収まっているなら、無断だからといって、別の高い率を置く理由は薄くなります。連絡の有無で率を変えるなら、連絡がないことで事業者に追加で生ずる損害(他の手配を止められないなど)に根拠があるかを確かめます。

日程変更も有料にできますか?

日程変更に伴って追加の費用が生じる場合に、その費用の範囲で精算を求めることは、設計として成り立ちます。日程変更が契約の解除に当たらないとしても、実際に生じる費用を超える手数料は、一方的な負担と見られるおそれがあります。実質がキャンセルと変わらない日程変更(直前の変更、繰り返しの変更)は、キャンセルの規定を適用する、と書いておくと、運用が安定します。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、取引の内容や契約の経緯によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で参照できます。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 特定商取引法ガイド / 国民生活センター

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